不都合な相手と話す技術
日本的発想が「意見を言わせる教育」において危険な鈍感力を生み出している。内心と言動を切り離して考えることができないためなのか、平気で子供たちの本心を聞き出そうとしてしまうのである。先述の落書き問題であれば、「あなただったら学校の壁に落書きをしますか?」、安楽死問題であれば「あなただったら自分の両親を安楽死させますか?」、臓器移植問題であれば「あなただったら臓器提供しますか?」。つまり一定の条件や情報の下で立場を明確にするだけではなく、個人的な意見決定をするところまで求めてしまうのである。
これは思想や信条にかかわる「内心の開示」を求めるものであり、先生のそれを聞く権利もなければ、子どもにそれに答える義務もない。はっきり言って人権侵害なのだが、まじめで熱心な先生ほど鈍感力を発揮するあたりが恐ろしい。
『不都合な相手と話す技術』(北川達夫)